枯れたし尽きたし跡もなし

薄っぺらな日常のなんてことない独り言です。

琥珀色

おばけけむりが生産終了だそうですね。

駄菓子屋さんで売っていた、指につけて擦ると煙の出るやつ。

そうそう。あれです。

大したことないわりに、何故か欲しくなる不思議なやつ。

紙石鹸に並ぶ駄菓子屋さんの定番。

まだ売られていたんだと、感慨深く思いました。

 

私の頃は、確か「口裂け女除け」と書かれていたと思います。

 

え?どういうこと?ですって?

 

だからですね、口裂け女除けなんですよ。

使い方は、確か…口裂け女が出たら煙を出すんですね。

そうすると、口裂け女が襲ってこない…逃げる?だったかな?

 

とにかく、おばけ煙を出すと口裂け女に襲われないんですよ。

 

丁度、口裂け女が巷を席巻しておりましたしね。

 

もちろん、私も1つ持っていました。

だって、口裂け女が、めちゃくちゃ怖かったんですもの。

今じゃ、私の方が怖いやもしれませんが、私もチビッコで御座いましたからね。

 

うーん…(。-_-。)

 

信じていたからではないんですよ。

でも、逢魔が時の影の長さ、木目の節、風の音、水が滴る音…そんなようなものが、物凄く怖くて怖くて仕方がなかったんですね。

あ〜…今も風の音と木目の節は怖いですね。'`,、(´∀`)'`,、

 

成長もしまして、逢魔が時を怖がることはなくなった代わりに。

懐かしいと思うことが増えましたね。

 

夏の夕暮れ。

まさしく逢魔が時の路地に並ぶ植木鉢たち。

魚を焼く匂いやカレーの匂い。

どこからか聞こえる風鈴の音や、誰かの笑う声。

焼けたアスファルト打ち水の匂い。

 

郷愁にかられるのは、なくしたものを数えるからでしょうか?

探し物が見つからず泣きたくなるような、そんなような。

 

 

蚊取り線香の匂いが漂う夏の宵。

開け放たれた窓から漏れ聞こえるテレビやラジオに賑やかな笑い声。

玄関先の花火の匂い。

団扇で扇ぎ扇ぎ将棋や囲碁をさすおじさんたちの悲喜交々。

呼び止められ振り向くと、西瓜を差し出す歯の抜けたお婆ちゃんの笑顔。

盆踊りでもらったアズキバー。

遠くから聞こえる打ち上げ花火の音。

カラコロ鳴る庭下駄。

浴衣のカラフルな兵児帯

 

不思議と夏は、郷愁にかられることが多い。

 

春なら、桜吹雪、レンゲ畑、小川のタニシ、ビニールハウスのイチゴの匂い。

菜の花のむせるような匂い。

 

秋なら、落ち葉を焼く匂い。

運動場の埃っぽさ。

図書室の匂い。

 

冬なら、積もりもせずに、ただただ静かに降り舞う白く冷たい牡丹雪。

風に流れて行く無数の雪虫

冬の匂い。

 

 

 

…歳とったんだなぁ…。

 

夜も更けに更け。

氷が溶けて薄まった冷たい麦茶が昔と変わらず懐かしくて美味しい。